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レビュー『亲爱的爸妈』

亲爱的爸妈

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公式weibo:https://weibo.com/u/6077801253

 

形式

 ドラマ(全43話)

 

放送期間

 2021年8月〜9月(2020年撮影)

 

メインキャスト

 柳碧云:闫妮

 江天怀:王砚辉

 江林:张逸杰

 江梅:李春嫒

 江森:王子睿

 李冰:翟潇闻

 江雪:秦牛正威

 欧阳红:戴燕妮

 王改凤:崔莉雅

 

放送局

 北京卫视、爱奇艺、腾讯视频

 

日本からの視聴方法

 腾讯视频アプリから(爱奇艺はジオブロあり)

 

あらすじ

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 文革後を生きたある家族の物語。1977年春末、京劇役者の柳碧云(演:闫妮)は、夫・江天怀(演:王砚辉)と息子・江林(演:张逸杰)と共に10年ぶりに江城市の家へ帰る。家では娘の江梅(演:李春嫒)が待っていたが、彼女は後妻の柳碧云を家族の一員と認めず、彼女を追い出そうとする。また、江家長男の江森(演:王子睿)は政策(※)のため農村から江城市に帰れず、柳碧云と元夫との娘・江雪(李雪)(演:秦牛正威)は農村で恋に落ちた男の子供を身籠るが男に逃げられ、息子・李冰(演:翟潇闻)は内向的で家族を含む周囲との関係をうまく築けなかったりなど、一家には悩みの種がたくさんあった。今作は、多くの衝突や困難を乗り越えながら、少しずつ前へと歩んでいく家族の様子を描いたホームドラマである。

 

※下乡(上山下郷運動):文革期の中国において、毛沢東の指導によって行われた都市部の青年層の地方での徴農を進める運動のこと。1968年からおよそ10年間行われた。

 

評価点数

 3点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 全話見終わった時の謎の達成感と疲労感が凄まじかったです。今作はある家族の日常の姿を描いたお話でしたが、順調で穏やかな時間より、いざこざや上手くいかないことの方が多く描かれていた点がリアルだったなと感じました。疲れました。登場人物もたくさん出てきましたが、どのキャラも癖が強くて大変でした。

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 聞いたところによると、元々60話での放送予定で撮影がされていたものの、放送に当たって削りに削られ現在の43話になったらしく、だから後半は急に話の脈絡が飛んだり、時間が一気に何年も過ぎたり(しかも何年過ぎたかは明言されず)、なんだか継ぎ接ぎな印象を受けたのかと納得しました。もし本当に60話分放送されていたら、今抱いている感想も変わっていくんだろうなとも思います。それだけ後半の謎のテンポがもったいなかったです。

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 個人的にはこの作品を見ていてとても疲労感をいつも感じていたのですが、それは癖が強すぎる登場人物たちに起因しているのかなと考えています。ご覧になった方はわかると思うのですが、本当に大変なキャラが多い。特に女性陣。もうこの子が出るシーン全カットしてくれ…と思うほど大声や奇声を上げまくる、家族よりお金が大事な失礼な子もいれば、自分で育てると言って子供を産んだのに養育は他人に任せっきりで、自分は外の地で別の男を見つけて、その男と結婚するために自分がいない間ずっと子供の世話してくれた夫と離婚したり、子供が新夫の言うことを聞かなかったら、自分がいない間ずっと子供の面倒見てくれてた姉のせいだと言うような子がいたり、弟子にしてほしいと無理を言って押しかけてきたのに陰で師匠のこと「更年期なのよ」と悪口を言って、自分を好きな男の子の好意は拒否するのにアッシーや仕事のマネージャーとして何年も利用し続ける子がいたり、大変でした。本当に。見ているときのストレスがすごかったです。途中から、「なんで私このドラマ見てんだろ?」みたいな気持ちになって、後半はもう意地でした。

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 また、キャスト陣の演技力の差も頭を抱える種の1つでした。メインキャストの中では、主人公の柳碧云をはじめ、夫の江天怀、江家の(元々の)3兄弟・江森江梅江林は、本業で俳優をずっとやられている方が演じられていたので、素人目に見ても自然な演技で役そのもので、セリフもいくら早口でも聞き取りやすくて、ふとした時の表情や動作などが合っていて素敵だったのですが、本業で俳優をやられてこなかった方々との差がその分すごく出てしまったな、と。今作は、通常のセリフ部分は私の分かる限りでは全員実声配音だったのですが、すごく滑舌がアレで聞き取れない方がいたり、演技だなあ…と感じられてしまうような演技をされている方がいたり、セリフがとても棒読みだったり…。素人が何言ってるんだという感じですが、その素人でもここまで感じてしまって擁護しきれないほどだった、ということなのかな…と自分では思っています。

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 個人的にはお話を通じて1番成長したなと感じたのが江家長女の江梅でした。最初はTHEクソガキという感じで、とても自己中心的で暴力的な彼女のことがあまり好きではなかったのですが、次第に様々な経験を積む中で、芯があり、優しさもあり、昔の負けん気の強さもまだ残っている素敵な女性に成長していきました。特に養子として笑笑という女の子の赤ちゃんを迎えてから、母親として子供を愛することを通じて、人間としてすごく素敵になっていったなと感じました。お話後半では柳碧云とも仲睦まじくなっていて2人が可愛かったです。この世代の女性のメインキャラの中で1番人格がまともだと確信しています。

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 主人公の柳碧云が京劇の名優ということで、今作では京劇のシーンが多く出てきました。闫妮さんの身のこなしや所作もとても美しかったです。時代が変わっていくにつれ、京劇という芸術が置かれていく立場が変わっていき、時代の流れに逆らえない虚しさをとても感じました。最終話の最後のシーンが、弟子が舞台に立つ中、控室の化粧台の前で柳碧云が1人静かに涙を流す、という描写だったのですが、それがとても綺麗だったなという印象を抱いています。ただ、なぜか京劇の歌部分の配音が男性京劇役者さんの配音で…。明らかに声だけ浮いていて、そこが少し残念でした。

 

 中国のホームドラマを見たいという方は見てみるのもアリなのではないかと思います。もし気になった方がいましたらぜひご覧ください♪

 

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