中国エンタメを見守る

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レビュー『美國女孩』(邦題:『アメリカから来た少女』)

美國女孩』(邦題:『アメリカから来た少女』)

日本版公式サイト:https://apeople.world/amerika_shojo/#

 

形式

 映画

 

上映年

 2021年

 

メインキャスト

 梁芳儀:方郁婷 

 王莉莉:林嘉欣

 梁宗輝:莊凱勛

 梁芳安:林品彤

 

日本からの視聴方法

 Netflix、全国劇場(台湾巨匠傑作選2023)

 

あらすじ

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 2003年冬、母と妹とロサンゼルスで暮らしていた13歳の梁芳儀(演:方郁婷) は、母が乳がんになったため、3人で台湾に戻ってくる。台北の中学に通い始めた芳儀は、決められた髪型や制服、苦手な中国語の授業、先生の体罰などアメリカとは違う学校生活になかなか馴染めない。幼馴染のティン以外のクラスメイトからは “アメリカン・ガール ”と呼ばれ疎外感を味わい、アメリカの友人に「ここは最悪」とメールを送る。家では母が術後の不調を訴え、9歳年下の芳安(演:林品彤)が病気の話で芳儀を苛立たせる。家族と久々に一つ屋根で過ごすことになった父は、妻を心配し娘たちを気遣いながらも、生活のために出張で家を空けざるを得ない。

 母に対しやり場のない怒りを募らせる芳儀は反抗的な態度を取り続ける。そんな娘に母も感情的になり、親子の溝は広がっていく。乗馬が好きだった芳儀は、インターネットカフェに出入りして台湾の乗馬クラブを検索し、母への不満をブログに書いては気を紛らしていた。間もなく、ブログを読んだ教師からスピーチコンテストに出ることを勧められた芳儀は前向きになる。だが、コンテストの前日、発熱した芳安SARSの疑いで病院に隔離されてしまう。

(日本版公式サイト(URL上述)より引用、名前部分を漢字に変更、役者名を挿入)

 

評価点数

 3.5点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 結局、問題は何一つ解決していない。エンドクレジットが流れ出してすぐそう思ったのは、私が”子を持つ親”ではないからでしょうか、それとも。

 本作は、小学生から中学生の途中までをアメリカで過ごした母と二人の娘が、故郷であり一人離れて暮らす父親が待つ台湾に「帰国」するところから始まります。このうち、長女である梁芳儀が本作の主人公です。

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 正直に言うと、見ていて心地いい映画ではありませんでした。なぜなら、梁芳儀の心情に強く感情移入してしまったからです。生活環境は突然変わり、学校に馴染めず、異端であることを殊更強調され、馬鹿にされ、理不尽な体罰を受け、病気を患った母は不安を自分にぶつけ、自分の好きなもの・心安らぐものすら壊され、自分の居場所を感じられず、だけど一人ではどうすることもできない無力な中学生の少女は現状の不満や自身の胸の蟠りを母にぶつけることしかできず、もちろん母はそれすら否定し、父は常に母の味方。ここならば、と逃げ出した先にも、結局自分の居場所はなく、家に帰ることしかできない。

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 詳細は省きますが、私自身が幼い頃両親からとられていた態度も、梁芳儀のそれとかなり似通っていました。そのせいか、台詞として可視化されていない梁芳儀の辛い気持ちが刺さるように伝わってきました。「楽しかった!面白かった!」と純度100%の感想を抱け、という方が無理な話かなと思います。でも、だからといって両親のことを嫌いになれるわけじゃないんですよね、それもすごく共感しました。好きだからこそ、であって、作中で学校の先生が言っていた「愛憎は表裏一体」という言葉が胸に沁みました。

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 という個人の話は置いておいて、映画それ自体の部分についての客観的な感想を述べると、俳優陣、特に主人公の梁芳儀を演じた方郁婷ちゃんの演技がものすごく上手かったです。これが演技初挑戦だなんて信じられないくらい自然で、思わず深く感情移入してしまいました。2003年当時の台湾社会の様子もよく分かり、その点に関してはとても素晴らしい作品だったと思います。

 いつか私が”子を持つ親”になって、この作品を思い出すような時があれば、その時はどんな感想をこの作品に抱くようになるんだろう。そんなことを考えさせられる作品でした。

 

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レビュー『偷偷藏不住』

偷偷藏不住

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公式weibo:https://weibo.com/u/7745083557

 

形式

 ドラマ(全25話)

 

放送期間

 2023年6月~7月

 

メインキャスト

 桑稚:赵露思

 段嘉许:陈哲远

 桑延:马伯骞

 桑荣:邱心志

 黎萍:曾黎

 

放送局

 优酷

 

日本からの視聴方法

 优酷アプリから

 

あらすじ

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 桑稚(演:赵露思)、中学生。片想いの相手は、大学生の兄の同級生、段嘉许(演:陈哲远)。だけど段嘉许は、いつも自分のことを子ども扱いしてばかりで、きっと妹としか思っていない。この恋心は隠しておこう。だけど、やっぱり段嘉许の将来の恋愛が気になる桑稚は、二人で出かけた日に段嘉许と約束を交わす。「もし段お兄ちゃんに彼女ができたら、まず最初に私に教えてね」。

 高校生のある日、桑稚は「段嘉许に彼女ができた」という話を耳にしてしまう。居ても立っても居られずに、段嘉许のいる宜荷へ飛行機で旅立つ桑稚。空港で目にしたのは、自分の元へと駆け付ける段嘉许と、彼の傍に立つ見知らぬ美人な年上の女性だった。桑稚は、段嘉许に彼女ができ自分は失恋してしまったこと、しかも「彼女ができたら自分に教える」という過去に交わした約束を段嘉许が忘れていたことに悲しみ、泣き崩れた。

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 高校生のあの日以来、桑稚段嘉许への恋心を封印し、なるべく関わらないようにしてきた。大学生になり、桑稚は宜荷大学へ進学する。ルームメイトなど大学の同級生たちと一緒にカラオケに行くと、そこで偶然にも段嘉许との再会を果たす。二人の運命は再び交わり始めた。

 

評価点数

 4.0点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 青春恋愛ドラマの王道作品として、非常に出来の良い作品だと思いました。元々の原作小説が、おそらく若い女性(中高生くらい)をターゲットに書いた作品だと思われるので、ドラマ版も同様の年齢層をメイン視聴者層として捉えているんだろうなという印象は受けましたが、それを踏まえても面白かったです。

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 中学生の桑稚が大学生の段嘉许に恋をし、桑稚が高校生、大学生と年を重ねていく時間の流れと共に、二人の関係性の変化を描いていました。大前提として二人の間には小さくない歳の差があったり、その他様々な要因があってつまずきかけていたけれど、それでも最後は幸せに結ばれてよかったです。

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 桑稚役を務めた露思ちゃんは、純粋な恋愛メインの現代劇は久しぶりだったのではないでしょうか?演技力がとても高い女優さんなので、どの役でも見事にこなしてしまうのですが、今回演じた「現代に生きる等身大の女の子」としての桑稚は彼女が演じてきた役の中でも、とてもハマり役だったと思います。

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 本作を観ながら強く感じていたのが、桑稚の家庭環境がどれほど恵まれているかということでした。優しく理性的で子どもへの愛を惜しまない両親、普段は口が悪いけれど妹のことを何より大事に考えている兄、不自由ない経済環境。こんな家庭でそだったらそりゃいい子になるよな、と思ってしまうほど、ある種”理想”を詰め込んだような家庭が描かれていました。

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 一方で段嘉许の家庭環境は、当人自身がどう思うかは置いておき、第三者の視点から客観的に見ると御世辞にも「良い」とは言えない家庭環境で。印象的なほど二人を取り巻く環境の差は大きかったのですが、この物語が上手いなと思うのは、(物語の初めの部分では)段嘉许が桑稚を救ったという描写があった点です。

 もしこれで初めから桑稚が段嘉许を救った、というような描写をすると、「恵まれた家庭環境にある人が、恵まれない家庭環境にある人を救った」という「施し」が強調されるような描写になってしまい、好ましく思わない人が出てきたのではないかと思えたからです。最終的には段嘉许も桑稚(大学生)に救われる描写もあり、お互いがお互いを支えるという素敵な関係になっていくのですが。

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 話を変えて。本作の中で、個人的には桑延が登場人物の中で一番お気に入りでした。漫画版の本作を前から読んでいて、当時から桑延がお気に入りキャラクターだったのですが、马伯骞さんが演じられたことによってまた一段と好きが増しました。

 马伯骞さんは本業はたしか歌手だったはずなので、演技の世界に入ってくることにとても驚いていたのですが、「演技上手いじゃん!」と思わず思ってしまうほど桑延として物語の中に生きられていました。本当に桑延というキャラクターは素敵でした。あんなお兄ちゃん、ほしいですよね……

 

 全25話かつ話のテンポがいい、サクッと見やすい作品なので、気になった方がいたらぜひご覧ください。

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レビュー『隐秘的角落』(邦題:『バッド・キッズ 隠秘之罪』)

隐秘的角落』(邦題:『バッド・キッズ 隠秘之罪』)

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公式weibo:https://weibo.com/u/7223927377

 

形式

 ドラマ(全12話)

 

放送期間

   2020年6月

 

メインキャスト

   朱朝阳:荣梓杉

   严良:史彭元

   普普:王圣迪

   张东升:秦昊

   陈冠声:王景春

   周春红:刘琳

   朱永平:张颂文

   王瑶:李梦

   叶军:芦芳生

 

放送局

 爱奇艺アプリから

 

あらすじ

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 朱朝阳(演:荣梓杉)のもとに、かつての友人で現在は児童養護施設で暮らす少年・严良(演:史彭元)と、严良と児童養護施設で友人である少女・普普(演:王圣迪)が尋ねてきた。仲良くなった三人は、朝阳の母が務める観光地へ行き、ビデオを撮る。そこには、一人の男性が高齢夫婦を山から突き落とす姿が映っていた。朝阳は警察へ通報しようとするが、児童養護施設へ戻りたくない严良によって阻止される。普普の弟の手術代を準備するため、二人はまだ帰ることが出来なかったのだ。普普は、この映像を使って犯人に警告しようと提案する。

 

評価点数

 3.5点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 紫金陈の小説『坏小孩』を原作に、アレンジを加えたミステリー・サスペンス作品です。ドラマ版と原作版では登場人物、物語の展開、結末に大きな差があるので、原作小説を読んでいても別物として新鮮にドラマを楽しめます。

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 個人的に原作小説(の邦訳版)を先に読んでいたのですが、原作の内容を踏まえた状態で見ると少しガッカリというか、物足りないなあという気持ちになってしまいました。

 このドラマ作品が面白いのは間違いないのですが、原作の方がより朱朝阳の賢さが際立っており、また結末においても原作の方が高揚感を保ったまま読了することが出来たので、それらに対する感動が強かった分……というところはあります。

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 ただ、原作小説は非道な描写、残虐な描写が多くて、これをそのまま映像化すると絶対に審査クリアできないだろうなと思うので、このようにドラマ版として改編したのは良いアイデアだと思います。

 ドラマ版はより登場人物の「人間味」とでも言うようなものが強調されていた気がしました。朱朝阳が子どもらしい精神の未熟さを見せたり、詰めの甘さを見せたり、张东升が子どもたちと関わるうちに少しずつ絆されていったりなどです。このように登場人物たちの人間身を強調することで、視聴者を置いて行かないような(登場人物たちに感情移入できなから面白くない、と思わせないような)作品作りにしていたのかなと思いました。

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 本作は子役たちの演技がいいのはもちろん、脇を固める大人の役者の方々も実力派が揃い、臨場感がある視聴者を引き込む映像になっていました。「原作がこんなに面白いんだから、ドラマも絶対に面白くするぞ」という制作陣の本気が見て取れたような気がして嬉しかったです。

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 本作は視聴者に様々な考察の余地を与えるような作品だと思います。誰がどんな罪を犯したのか、悪いのは誰か、中国のどのような社会問題を反映しているか、などなど……。

 個人的には、ドラマを見ている時は朝阳たち子ども側に立って大人たちを見ているのに、見終わった後に「そういえば自分はもう大人側の年齢に近い立場だ」ということに気が付き、その気づきを得た後に再度作品を見返すと、一回目とは違う感覚を抱くことが出来たのがとても面白かったです。

 本作を見ながら、よかったら様々なことについて思考を巡らせてみてください。

 

 作品が面白いということは間違いないので、興味がある方はぜひ見てみてください!ドラマ版を見た方は、ぜひ原作小説を読むこともオススメします。

 

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レビュー『我不是药神』(邦題:『薬の神じゃない!』)

我不是药神』(邦題:『薬の神じゃない!』)

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公式weibo:https://weibo.com/u/6155884989

 

形式

 映画

 

上映年

 2018年7月5日

 

メインキャスト

 程勇:徐峥

 曹斌:周一围

 吕受益:王伟君

 刘思慧:谭卓

 彭浩(黄毛):章宇

 刘牧师:杨新鸣

 张长林:王砚辉

 

日本からの視聴方法

 日本の各種配信サイト、爱奇艺、腾讯视频、优酷アプリなどから(ジオブロあり)

 

あらすじ

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 中国・上海。白血病治療のための薬・格列宁はあまりにも高価で、一般市民には手を出せないほどだった。病気の父の手術代が必要な程勇(演:徐峥)は、白血病を患っている男性・呂受益(演:王伟君)に、お金が必要なら、インドで売られている格列宁と薬効は全く同じだが価格が20分の1の薬(中国では違法薬とされている)を中国で売ってくれと持ち掛けられる。初めは拒否する程勇だが、彼もお金が必要だったため、インドに向かい薬を買い付けることに。中国国内で販売を始めると、巨大な需要に支えられて程勇は見る見るうちに大金を稼いでいき、販売仲間のような存在もできた。しかし、张长林(演:王砚辉)にインドの薬を販売していることが露呈し、脅しを受けて程勇はインドの薬の販売をやめた。

 一年後、工場の経営者になっていた程勇の元への妻がやってくる。彼女によると、は捕まり、薬が手に入らなくなっては死にそうになっていた。病室で弱り切ったを見て、程勇は再びインドに向かい薬の買い付けを再開する。しかしは間に合わず亡くなってしまった。今度は人を救うために薬を売ろうとした程勇は、500元での販売を決める。だが、違法薬を取り締まろうとする曹斌(演:周一围)ら警察の動きも活発になってきて……

 

評価点数

 3.5点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 4年前、中国で話題作となった映画です。日本でも劇場公開され、配信サイトでも日本語字幕で見ることができます。社会問題を描きつつ、終盤は辛さと悲しさで涙が止まらなくなる感動作でした。

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 物語のきっかけは、白血病患者への正規薬である格列宁が法外な値段で、中流〜貧困世帯には手が出せないため、インド産の価格の安い薬を求めようとしたこと。最終的には格列宁も医保の中に入り、手に入りやすくなったことが描かれました。

 中国の医療保健制度について詳しくは知らないのですが、日本の国民皆保険とは違うのかなと思うので、こういう医療の格差問題は発生するよなと思いながら見ていました。この作品を通じて、改めて中国の社会について考えようと思えるきっかけを与えてもらいました。

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 話の内容としては、最初はお金儲けのためにインドの薬を売っていて、白血病患者をお金をたくさん使ってくれる客としか見ていなくて、富豪になってつけ上がっていた主人公が、呂の死を通じて白血病患者たちのことを真摯に考えるようになり、彼らを1人でも救うために自身の危険を顧みず薬を売るようになった、という心情の変化が印象的でした。

 また、インドの薬(=当時の中国では違法薬)を売っている人間を取り締まろうとする警察に対し、そのインドの薬で命が長らえられている患者が訴えかけるシーンも個人的には印象深いです。というか、主人公が1回インドの薬の販売から足を洗ってから1年後の、作品後半部分はもう全シーン印象的で......、ぜひ見ていただきたいです。

 

胸が締め付けられ、社会についても改めて考えさせられる感動作です。日本の配信サイトでも見れるので、興味を持った方はぜひご覧ください!

 

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レビュー『听见我的声音』

听见我的声音

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公式weibo:https://weibo.com/u/6373488937

 

形式

 ドラマ(全25話)

 

放送期間

 2022年10月〜11月

 

メインキャスト

 赵漫儿:张楚寒

 于铭:张开泰

 金宇浩:陈叶生

 甄优美:贺灵榣

 傅晓颖:张艺

 冷杨逍苍:马睿瀚

 马星野:金子

 王冉:小雪

 叶泽:代文博

 吴天棋:李雨蔓

 

放送局

 爱奇艺

 

日本からの視聴方法

 爱奇艺アプリから

 

あらすじ

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 高校2年生の赵漫儿(演:张楚寒)は不思議な夢を見た。女優になった未来の自分が、とてつもない炎上に巻き込まれている夢だ。登校中、日課のMP3への録音日記でその夢のことを話した赵漫儿は、教室に着いた後、MP3に「新録音」という表示が出ているのを目にする。不思議に思い再生ボタンを押すと、見知らぬ人物からの返事が再生された。それはなんと未来の自分、30歳を目前にした女優の赵漫儿だった。未来の赵漫儿は、悲惨な自分の人生を変えるため、女優になる夢を諦めさせようとMP3を通じて過去の自分に指示を出そうと画策する。

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 高校生の赵漫儿は成績優秀で天真爛漫。今日も親友で同じクラスの甄优美(演:贺灵榣)、傅晓颖(演:张艺)とはしゃいだり、腐れ縁の于铭(演:张开泰)と喧嘩をしたり。そこに痩せてイケメンになった幼少期の友人・金宇浩(演:陈叶生)が帰ってきたのだが、どうやら赵漫儿に気がありそうで…?

 

評価点数

4点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 青春の甘酸っぱさに胸がときめいたり、真摯なメッセージに心打たれたり、とても面白い作品でした。視聴前の期待値をはるかに上回る満足感を得られたので、見て良かったと思いました。

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 ストーリーとしては、現代(2020年)と過去(2008年)が並行して進んでいく展開となっています。女主人公が過去に用いていたある種の携帯電子機器を用いて、過去の人物と連絡を取り、過去の行動を変えることで未来を変えようとする、という一連の流れは、他の作品でも似たような設定があったので目新しさはありませんでした。

 ですが、今回は現在と過去の自分たち同士で連絡を取るという設定だったので、自分同士が喧嘩する描写などがあり面白かったです。

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 全体を通して心温まるお話でした。恋の三角関係があったりなど、恋愛面も良かったのですが、何より女主と彼女の友人たちとの関係がとても温かくて。30歳になっても高校時代の同級生の仲良しグループで同窓会出来るのすごいな…と思いながら見ていました。高校時代でも現代でも、女主を助けるために友人たちが一丸となってサポートする、という描写がとても美しかったです。

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 恋愛方面では、女主を好きな男主と男二の二人がとてもいじらしかったです。痩せて高身長イケメンとなった男二が、周りの都合も顧みずに女主のことと自分が女主の傍にいることだけを考えて行動する反面、男主は女主のことを大切に思っているからこそ、彼女の周りの人たちのことも気にかけて、女主が間違った道を進みそうになったら怒ってでも止めていて良かったです。

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 あまりにも男二と女主の2人の演技シーンが多いので、弾幕では半分冗談半分本気で「誰が本当の男主なの?」というようなことがよく書かれていましたが、上記のことを踏まえるとやっぱり男主は男主だなと個人的には思います。

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 今作も主演の张楚寒ちゃんの演技がとても良かったです。楚寒ちゃんは役者畑出身ではないのですが、前作の『明天也想见到你』レビュー『明天也想见到你』 - 中国エンタメを見守るの時と同じく演技がとても上手くて、自然で。推し贔屓抜きで見ても楚寒ちゃんの演技は共感力が強く魅力的だと思います。

 今作の後半部はかなり感情が激しくなるシーンがあるのですが、そこも見事に演じきっていて素晴らしかったです。見ていて同じように胸が痛かったし、同じように泣いてしまいました。

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 そして何と言っても男主の于铭を演じた张开泰くん。彼は今作で初めて知ったのですが、なぜ今まで彼のことを知らなかったのか後悔するくらいとても魅力的な役者さんでした。楚寒ちゃんのところでも書いたのですが、彼もとっても演技が自然。彼自身にピントが合ってないカットのシーンでも、「于铭ならこうするよなあ」という仕草をしていてすごかったです。

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 そして何より笑顔が可愛い!笑顔が可愛すぎて、狂います。なんであんなに笑顔が魅力的なんだろう……怖いです……。多分今作見た人は皆、张开泰くんの笑顔にやられると思います。本当に可愛いのでぜひぜひ見ていただきたい。

 

 1話30分強で全25話、しかもジオブロなしというとても見やすい環境で、その上内容もとっても良く、役者陣の演技もとても良いという素敵な作品でした!オススメなのでぜひ見ていただきたいです。そして一緒に张开泰くんの笑顔の可愛さに狂いましょう。

 

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レビュー『八佰』

八佰

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公式weibo:https://weibo.com/u/6069416831

 

形式

 映画

 

上映年

 2020年8月21日

 

メインキャスト

 谢普元:杜淳

 端午欧豪

 羊拐:王千源

 老铁:姜武

 老算盘:张译

 朱胜忠:魏晨

 

日本からの視聴方法

 爱奇艺、腾讯视频、优酷アプリなどから(ジオブロあり)

 

あらすじ

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 本作は1937年日中戦争中の、第二次上海事変における「四行倉庫の戦い」を舞台としている。租界と川を挟んで隣接するこの倉庫では、謝普元(演:杜淳が率いる中国軍部隊と日本軍が激しい戦いを繰り広げる。絶望的な状況下で、それでも彼らが中国人兵士としての誇りを忘れず日本軍に立ち向かう様を見て、初めは他人事としていた租界の住民たちも心を動かされる。最後は、日本軍の激しい攻撃を浴びながらも、決死の思いで倉庫から租界へ撤退する部隊の姿が描かれ、映画は幕を閉じる。

 

評価点数

 3.5点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 日中戦争下、上海の租界近くで行われる中国軍と日本軍の激しい戦闘を描いた作品でした。突飛なこともおこらず、ただ悲惨な歴史(かつ、中国にとっては不屈と勝利の歴史)を見せつけられているという印象を受けました。私は見ていてとても面白く感じましたが、見る人、特に日本人視聴者にとっては人を選ぶ作品かなと思います。

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 本作でメインに描かれているのは、謝普元が率いる中国軍の部隊と日本軍の戦闘です。中国軍と日本軍の戦闘シーンでは、目を覆いたくなるほどの残酷な描写が息をつく間もなく展開されます。そしてその戦闘シーンが、本作においてはかなりの時間を割いて描写されています。普通に人が残酷なかたちで次々と亡くなっていくので、戦争映画を観慣れていない方には少しきついかもしれません。

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 本作は確か日本公開が予定されていて、日本版ポスターなども見かけた気がするのですが、結局どうなったのでしょうか。もし日本の全国の映画館で上映されて、日本人視聴者の目に多く触れるようになったら、どういうリアクションが返ってくるのか、気になるところではあります。

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 個人的に印象深かったのは、戦闘が繰り広げられていた倉庫と、見かけ上は平和な租界の対比です。倉庫と租界は川を挟んで隣接しています。なのに、今日死ぬかも分からない激しい戦闘下に置かれている倉庫と、夜にネオンが輝きバーや演劇など市民の娯楽が繁盛している租界と、両地点を取り巻く状況には大きすぎる差があります。この差の描写がとても残酷で、倉庫にいる兵士たちが倉庫の窓から川向こうの租界を眺める姿は胸が痛かったです。

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 物語終盤には、倉庫で奮闘する兵士たちの姿を見ていた租界の中国国民たちが、兵士の姿に胸をうたれ、次第に行動を変えていきます。日本軍の射撃が降ってくる中、橋を渡って倉庫にいる中国軍に電話線を届けようと命がけのチャレンジをしたり、橋を渡って倉庫から租界へ撤退しようとする兵士たちに手を伸ばすなどの様子が描かれました。個人的には、この描写もちょっとグロテスクだな……と思ったり……

 

 抗日戦争映画としてはかなりクオリティが高い作品だったと思います。私はこの作品を見ることが出来て良かったと思いました。中国の動画配信サイトで見れるので、気になった方は是非ご覧ください。

 

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レビュー『民国大侦探』

民国大侦探

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公式weibo:https://weibo.com/u/7672595591

 

形式

 ドラマ(全24話)

 

放送期間

 2022年8月~9月

 

メインキャスト

 司徒颜:胡一天

 骆少川:张云龙

 周墨婉:张馨予

 金启明:宣言

 邹静宣:沈羽洁

 

放送局

 爱奇艺

 

日本からの視聴方法

 爱奇艺アプリから(ジオブロあり)

 

あらすじ

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 治外法権がはびこる民国期の中国。弁護士の司徒颜(演:胡一天)は、裁判で明確な証拠を提示し被告人を罪に問おうとするが、外国籍の被告人は無罪を与えられる。それに異を唱えた司徒颜は、裁判所から、弁護士という職から追放されてしまう。今後どうしていくか悩んでいた時、恩師からの手紙を受け取り、恩師のいる哈爾濱へ行くことに。その道すがら小さな事件を解決したことをきっかけに、骆少川(演:张云龙)と知り合う。骆少川はお礼として司徒颜に、哈爾濱行の寝台急行列車の一等室の旅券を渡す。司徒颜たちが列車に乗り哈爾濱へ向かうその夜に、一等室で一人の男が殺されているのが発見された。司徒颜骆少川と共に、犯人を探し出そうと推理を始める。

 

評価点数

 3.5点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 アガサ・クリスティ著『名探偵ポアロ』シリーズを原作に改編、民国期の中国にローカライズした作品です。ポアロシリーズの事件がほぼ違和感なく民国期の中国で起こった事件にローカライズされていたので、制作陣の手腕にまずは賛辞を送りたいと思います。

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 本作では単純に述べると、胡一天さん演じる司徒颜がポアロ役を、张云龙さん演じる骆少川がヘイスティングス役を務めています。司徒颜の頭の良さや、真実への執着はポアロとの共通点を感じられました。また、骆少川の感情先行の行動や、司徒颜に単純さをたしなめられるところや、犯人の女性に惹かれてしまうところなども、ヘイスティングスとの共通点を感じられました。面白かったです。

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 ドラマ公式weiboの投稿を基にすると、本作では計8つの事件が描かれました。

 1:东方快车谋杀案
 2:首富庄园谋杀案
 3:女校闹鬼惊魂案
 4:炸酱意面投毒案
 5:豪门出轨情杀案
 6:日本领事绑架案
 7:雪夜连环杀人案
 8:双面恋人失踪案

どの事件がポアロシリーズのどの作品を基にして描かれているか、原作ファンにはちゃんと分かるようになっていたので、それを見つける楽しみもありました。

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 本作で描かれた第1の事件が、『オリエント急行の殺人』を原作にした「东方快车谋杀案」でした。ポアロシリーズにおいては、『オリエント急行の殺人』はシリーズ第8作なのですが、ポアロシリーズにおいて最も知名度が高いと言っても過言ではないため、視聴者を惹きつけるためにドラマの1番最初に置いたのは正解だったなと思いました。

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 民国期の中国を舞台にしているので、登場人物の服飾品や街並み、邸宅の様子、宅内の家具や装飾品がとても美しく、それらを見ているだけで楽しかったです。民国期ということもあり、街頭に掲げられた看板には日本語が書かれていることも多く、内容がシュールで面白かったのでよかったらぜひ探してみてください(笑)。

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 全体的に完成度が高く、面白い作品だと言えるのですが、1番最後の事件の真犯人の経歴について描かれているシーンで、何か思うところがある人が出てくるんじゃないかな、という印象を受けました。日本人が見ると余計にね…。

 

 純粋な探偵ミステリものとしてクオリティの高い良い作品だったんじゃないかなと思います。いずれ輸入されるかもしれませんが(最後にあのシーンがあるから無理かもしれませんが)、気になった方はぜひ爱奇艺にてご覧ください。

 

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