レビュー『胆小鬼』
『胆小鬼』
公式weibo:https://weibo.com/u/7591883643
◎形式
ドラマ(全16話)
◎放送期間
2022年8月~9月
◎メインキャスト
秦理:欧豪
黄姝:王玉雯
王迪:侯雯元
冯雪娇:周依然
冯国金:王砚辉
◎放送局
优酷
◎日本からの視聴方法
优酷アプリから(ジオブロあり)
◎あらすじ
1999年の冬、高校2年生の秦理(演:欧豪)と幼馴染の王迪(演:侯雯元)、友人の冯雪娇(演:周依然)のクラスに、黄姝(演:王玉雯)という女子生徒が転入してきた。4人は仲良くなり、特に秦理と黄姝はお互いの経験に共通点が多く、より仲を深めていく。困難がありながらも幸せな学生生活を送っていた4人だったが、あることをきっかけに、次第に友情に歪が生じていく。
時は過ぎ2011年。若い女性の遺体が雪上に放置されているのが発見された。剝ぎ取られた衣服と遺体の皮膚に刻まれた紋章は、10年前に発生した、女子学生が殺害された未解決事件の様子と共通していた。当時と同じ犯人の手によるものなのだろうか?そうであるならば、なぜ10年も経った今、殺人を繰り返したのか?犯人の意図は何か?10年前の被害者——黄姝の死の真相は?
◎評価点数
3.5点(5点満点、0.5点刻み)
◎総評と感想
かなり重い内容でたくさん考えさせられましたが、とても面白い作品でした。最終話視聴終了後も胸にモヤっとした後味が残るほど、複雑な気分になるエンディングで、でもそれが現実だよな、と思わされました。派手さはない作品だけれど、本作を観たら人生に深みが出るような気がします。
本作は、2000年(1999年)、2001年、2011年の3つの時間軸を交互に描く描き方で物語が構成されています。簡単に各時間軸を紹介すると、
2000年(1999年):幸せ学生時代→少しずつ歪が……
2001年:黄姝の事件が発生
2011年:現在
となります。最初はこの描き方に少し混乱するかもしれませんが、見ていくうちに、このように異なる時間軸を交互に描くことで、過去と現在の落差を強調させ、本作の不気味でどこか重苦しい雰囲気をより際立たせている効果があるなと感じさせられました。
本作のタイトルは『胆小鬼』なのですが、なんでこのタイトルになったのかを本作視聴後に改めて考え直すと、「世の中におけるすべての”胆小鬼”の人たちに捧げる」とでもいうようなメッセージを強く込めたかったのかなと思われました。ちなみに原作小説のタイトルは『生吞』です。比較すると、ドラマ版のタイトルの方が、より作品内でどんな内容を描いているか分かりやすいかもですね。
さて、そんな本作のテーマである”胆小鬼”。視聴前は「どういうことを指すのかな」、「誰の事を指しているのかな」とのんびり考えていましたが、視聴後は「なんかあんなのんびり考えちゃって本当にごめん…」という感情になりました()。
なんというか、自分は”胆小鬼”にはなりたくない、と本作を見て強く思ったのですが、社会の大多数の人が本作で描かれているような”胆小鬼”であって、”胆小鬼”たちの方が最終的には良く生きれて、幸せな生活を手にしていて、”胆小鬼”たちのせいで色々背負い込んでしまった側は幸せに生きることができない、という有り様を見て、そんな社会はダメだ!と思うと同時に、でもこれが現実だよな…という思いが浮かんできて、苦しんだりしました。(文章が長いし分かりづらい……)
改めて文字化するより、自分が視聴していた頃の感想ツイートの方が分かりやすい気がしたので、下に数件繋げておきます。苦しみ、憤っている様をご覧ください。↓
(ちゃんと貼れてますかね…?)
本作は本当に後味が苦い作品でした。誰も幸せにならない……のではなく、幸せになるべき善良な人たちが幸せを手にできず、彼らを犠牲にした”胆小鬼”たちは円満な幸せを手にしていて……複雑な気持ちになりました……。
個人的に、「この人は割と重めに罰せられるべきなのではないか」と思う人物が数人いたのですが、彼らが罪を償う描写がなかったので、心残りです。でもそれが現実なんですよね……過去の行いで他人の人生をズタボロにした人たちが、平気で笑顔でのさばる世界……
このドラマを視聴した人たちは、今後の人生においてどのような選択肢を選んでいくのだろうかと、ふと気になりました。本作を見て意識が変わった人は変わっただろうし、ドラマはドラマだからと、そのメッセージ性に目をつぶり気付かないふりをする人もいるだろうし。自分がどちらなのかというのも、まだよく分からないです。ですが、「”胆小鬼”にはなりたくない」という思いが自分にある限り、その思いに基づいた選択をしていけたらいいな、と思います。
内容がしっかりとある、メッセージ性の強い作品です。冒頭にも書きましたが、観ればきっと視野が広がり人生の深みも増すのではないかと思います。気になった方はぜひご覧ください。