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レビュー『循环初恋』

循环初恋

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公式weibo:https://weibo.com/u/7512933689

 

形式

 ドラマ(全24話)

 

放送期間

 2021年7月〜8月(2020年撮影)

 

メインキャスト

 叶佑宁:施柏宇

 夏文希:陈昊宇

 林嘉祁:高茂桐

 高小爱:高秋梓

 杨闯:杨亘

 陈婷婷:徐婉婷

 

放送局

 爱奇艺

 

日本からの視聴方法

 爱奇艺アプリから(ジオブロあり)

 

あらすじ

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 2019年、31歳の叶佑宁(演:施柏宇)が認知症を患った自身の祖父を見舞いに地元に帰ったその日、辺り一帯に嵐が吹き荒れた。家中のラジオから次々と音が流れ始め、異空間のような雰囲気を纏いだした室内に、どこからか携帯電話の着信音が鳴り響く。音を出していたのは1台の古いガラケー。不思議に思った叶佑宁がその携帯電話のボタンを押すと、ちょうど学校ジャージを身に纏った自分が突き飛ばされ、1人の女子学生の自転車にぶつかった瞬間にタイムスリップしていた。そこは13年前の2006年3月1日、江城高校の3年に自分が転校してきた日だった。叶佑宁は元の時空へ変える方法を隣の席の同級生・夏文希(演:陈昊宇)と共に探す中で、夏文希の携帯電話が、自分がこの時空に来る直前に手に持っていたもの、そして2019年と2006年を繋ぐタイムマシンであることに気がつく。

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 夏文希の携帯電話を使い、なんとか2019年に戻るが、そこは元の時空とは状況が一変していた。過去で起こる出来事の少しの違いが未来に大きな変化をもたらすことに気がついた叶佑宁は、2019年を少しでも良いものにしようと、手元に残った夏文希の携帯電話(=タイムマシン)を通じ、2006年の彼女に指示をして過去の懸念をなくそうと図る。タイムマシンのおかげで少しずつ未来を変え、穏やかな幸せをついに手に入れられた叶佑宁。しかしそのタイムマシンこそが、彼らを逃れられない残酷な運命に繋ぐ鎖であったのだ。

 

評価点数

 4.5点(5点満点、0.5点刻み)

 

総評と感想

 ただの時空を超える系甘々恋愛ドラマだと思ったら大間違い、涙あり涙あり涙ありの重く深い内容が視聴者を待っています。今作は爱奇艺が手がける恋愛ドラマシリーズ・恋恋剧场のうちの1作品なのですが、物語が後半に進むにつれ辛さを増していき、視聴者の間で「もはや虐虐剧场なのでは?」と話題になるほど心がやられる作品でした。微笑ましいシーンももちろんあるものの、幸せ絶頂から絶望へ急転直下するスピード感がジェット級で、視聴者に心休める隙を与えません。主人公2人の切なくて苦しい運命に泣かされてばかりでした。終わり方もいろんな解釈ができる、視聴者個々人に考察の余地を与えた良い締め方でした。豆瓣电影ではなぜかあまりスコアが振るっていませんでしたが、個人的には5本の指に入るほどオススメできる素敵な作品だと感じています。

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 今作はタイムマシンを通じて過去(2006年の夏文希)と未来(2019年の叶佑宁)がやりとりをするお話であるため、2019年の話と2006年の話が同時進行で展開されていきます。2006年がクライマックス前までずっと同じ時間軸で進んでいくのに対し、2019年は2006年で起こったふとしたことで時空が一変するので、ある時空では嫌われ、ある時空では幸せに結ばれ、ある時空では決裂を克服してやっと結ばれて……と、同じ“2019年”でも多くの異なる物語が紡がれていました。2019年の叶佑宁は今までの全ての時空の記憶を持っているのに対し、夏文希をはじめその他の人間はその時空の記憶しかないので、数秒前まで幸せに結ばれていた相手に徹底的に避けられる時空に急に移ったりした時は、見ているこちらも辛くもどかしい気持ちになりました。

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 インタビューで夏文希役の陈昊宇さんが言っていたように、このお話はまさに「たくさんの男主とたくさんの女主の恋愛物語」です。新しく飛ばされた時空がどんな世界であれ、その時空での文希がどうであれ、真っ直ぐに文希を愛する叶佑宁がとても愛おしかったです。

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 それにしても、2019年の叶佑宁がいちばん初めに未来を変えようと思ったきっかけは祖父を救うためだったのに、いつからか夏文希を救うためになっていて、本人はその自分の意識の変化に気づいているのかな?とずっと気になっていました。叶佑宁にとって夏文希は、たまたまタイムマシンが夏文希の携帯電話だっただけで、最初は上手く嘘の設定を思い込まさせて自分の計画に協力してもらうくらいの存在だったのに、いつの間にか自分の存在を世界から消してでも彼女の幸せを守りたいと思うほど大切な存在になっていったのが微笑ましかったです。

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 全24話の今作ですが、物語のカラーが深刻さを帯びてくるのは19話からです。ネタバレを避けるため内容を書くことは避けますが、一つ言いたいのは、やっぱり陈昊宇さんの泣きの演技は上手い!ということ。本当に共鳴力が強くて、文希が辛そうに泣いている姿を見るとこちらも胸がとても苦しくなりました。そして18歳と31歳の夏文希の演じ分けも見事で。18歳の文希はとにかく明るくて元気いっぱいでみんなのムードメーカー!という感じの子なのですが、31歳の文希は落ち着きや上品さをしっかりと携えた大人の女性で、本当に“同じ人物が年齢を重ね成長した”という状態を表現されていてすごかったです。

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 叶佑宁を演じた施柏宇くんも難しい役どころを上手く演じあげていたと思います。先述の通り、2019年の叶佑宁だけ全ての時空の記憶を背負って生きているので、いろんな後悔や悲しみ、辛さに苛まれるさまを表現しなければならなかったのですが、見ていて彼の心情や境遇を想い胸を痛めずにはいられないほど、説得力のある役を演じあげられていました。主演のお2人の組み合わせがとても良かったので、また何かで共演してくれたらいいなと密かに思っています。

 

 ピンクでポップな可愛らしいオープニング映像と、甘々で微笑ましい場面写真に釣られて観にきていただいて、ぜひこの作品で虐恋ドラマの沼に落ちて欲しいです!確かに辛いシーンが多いけれど、それでも心に深く残るほど愛せる素敵な作品です。気になった方はぜひご覧ください。オススメです!


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